【相続】連載「相続に備える」(1):相続の流れと4つのポイント

誰でも巻きまれる可能性がある法律問題といえば、第一に交通事故、第二に離婚、第三に相続でしょう。
特に、相続についてはほとんど全ての方が1回以上経験することになるため、全く他人ごとではありません。

しかし、自分自身や両親の死に備えるというのは心理的になかなか難しいものがあり、準備をされていない方が多いのが実情です。

そこで、この連載「相続に備える」では、数回に分けて、ご遺族(相続人)の立場に立って、相続の一般的な流れとポイントについて解説したいと思います。

ご自身の立場に置き換えてイメージしながら読んでいただけますと幸いです。

 

 

相続のポイントは①遺言、②相続人、③相続財産、④遺産分割方法

 

まず初めに、相続とは結局何なのかというところからスタートしましょう。

相続とはつまるところ、「遺産分割」、すなわち

亡くなった方(被相続人)の財産や借金(=③相続財産)を、誰が(=②相続人)、どれだけ(=④遺産分割方法)引き継ぐか

という問題です。

その決め方は、第一に遺言(いごん/ゆいごん)により、遺言がない場合は法律により定まることになっています。

したがって、相続で最も重要な4つのポイントは、①遺言、②相続人、③相続財産、④遺産分割方法であるといえます。

 

 

①遺言-1:まずは遺言探し

 

上記のように、遺言は法律よりも優先されますので、相続への対応は遺言の探索から始まります。
遺言がない前提で対応していたのに、途中で遺言が見つかったとなれば二度手間になってしまう可能性すらあります。
ご自身がご家族に遺言を遺される際は、その旨をはっきりと伝えておいた方が良いでしょう。

もっとも、遺言を遺していることというのはご家族には伝えづらい場合もあります。
そのため、ないと思っていた遺言が実は存在していたというケースはままあります。

親しい友人や弁護士、あるいは銀行の貸金庫などに預けていたりするケースもありますので、遺言の心当たりについては相続人や関係者全員で確認したほうが良いでしょう。
弁護士が探索をお手伝いできる部分もありますが、原則としてご遺族のお心当たり頼みの作業になります。

また、どのタイミングで相続について弁護士に相談するかですが、遅くとも遺言の探索が終わった時点で、あるいはそれよりも前に一度弁護士に相談されるのをお勧めいたします。

なお、封印されている遺言については、家庭裁判所で相続人らの立会いの下で開封しなければならないことになっていますので、勝手に開けてはいけません!
ご注意ください。

 

①遺言-2:弁護士に手続を依頼する(遺言の検認、効力の確認、遺留分侵害の確認)

 

遺言が見つかった場合は、弁護士のところにお持ちください。

遺言の保有者は相続開始後遅滞なく家庭裁判所に検認の請求をしなければならないことになっています(民法第1004条第1項・第2項)ので、こちらの請求を弁護士が代わって行います。

加えて、遺言というのは単に遺書があればよいというのではなく、法律で定められた形式的な条件をすべて充たしたものでないと効力がないため、こちらの確認も弁護士が行います(※条件を満たしていない場合は遺言はないものとして扱われます)。

また、相続人の一部は、相続財産について最低限、一定割合をもらうことができる権利(=遺留分)を有しています。
いかに被相続人の遺した遺言といえども、この遺留分権利者をないがしろにすることはできませんので、このような遺留分侵害がないか、弁護士による確認が必要です。

このように、遺言が見つかってさえしまえば、後の処理は基本的に弁護士に一任することができます。

 

 

②相続人:相続人を確定する

 

上記と並行して、今回の相続の相続人は誰なのか、ということについて調査・確定する必要があります。

相続人の調査

相続人の調査は、弁護士が亡くなった方の戸籍を出生時まで遡って確認することで行います。

相続人の確定(相続放棄の確認)

戸籍上、相続人となる人でも、相続放棄という手続をとった場合、その人は相続人となりません。
したがって、相続放棄をした人がいないかを確認する必要があります。

また、ご自身も戸籍上相続人となりそうであるならば、相続放棄をする必要がないか検討する必要があるでしょう。

被相続人に借金の方が多く、相続しないほうがよいような場合は、相続放棄が有用です。

こちらの確認については弁護士がご遺族の方から聞き取りを行い、相続放棄をした可能性がある方がいる場合には照会書を送付するなどし、相続放棄の有無についてきちんと確認します。

遺産分割協議の当事者の確定

その他、(1)相続分を譲渡したり放棄したりした人がいた場合や、(2)行方が分からない相続人がいる場合、(3)未成年者や成年被後見人等がいる場合には、相続人ではない人が遺産分割協議に参加することになるため、そのようなケースにあたらないか確認します。

相続分の譲渡・放棄についての詳細は割愛しますが、誤解を恐れずにいえば、相続人としての権利を他人にあげたり、あるいは捨てたりする行為です。

 

 

③相続財産-1:相続財産の調査・評価

 

相続財産の調査

相続財産としてどのようなものが残されているかは、弁護士がご遺族からの情報をもとに、(1)預貯金、(2)不動産、(3)株式等、(4)債権債務その他考えられる財産について調査します。

これらの財産については弁護士が情報を照会する形で調査するのですが、日本中の市区町村や銀行に照会をかけることはできないので、ご遺族の側で不動産のだいたいの場所や、預金口座のありそうな金融機関等がわかっている必要があります。
実は相続人が土地を持っていたとか、思いもよらぬ借金があったとかといったことはままありますので、普段から相続人の方とコミュニケーションをとり、リストを作っておいてもらうなどしておけるとベストです。

相続財産の評価

相続財産が明らかになったあとは、相続財産の価値について評価を行います。
この点については土地や株式の評価方法が争いとなりがちです。

私的な鑑定により納得してもらうことも考えられますが、どうしても折り合えなかった場合には裁判所に鑑定を依頼することになります。

 

③相続財産-2:特別受益・寄与分の検討

 

相続人の中に、亡くなった被相続人からお金や物をもらっていた人がいた場合は、遺産を余分にもらっているのに等しいため、得た利益(=「特別受益」)を相続財産に持ち戻す処理を行います。

逆に、被相続人の仕事を手伝ったり看護をしたりしていた人がいた場合は、遺産を増加させたのに等しいため、貢献分(=「寄与分」)を相続分に加算する処理を行います。

何が特別受益で、何が寄与分かは争いになりやすい点です。
納得がいかない点についてはもちろん、思わぬものが寄与分として認められる可能性もありますので、弁護士に相談し、きちんと主張したほうが良いでしょう。

 

 

④遺産分割方法の決定

ここまでくれば、遺産を相続人間でどう分割するか、という話し合いになりますが、これも争いになりやすい点です。

特に、不動産、とりわけご実家の土地建物があるような場合に、ご実家の土地建物を残したい、相続したい相続人と、それ以外の相続人とで争いになることが多くあります

ご実家の土地建物に強い思い入れがあることは容易に理解できますが、相続には相続税もかかりますので、ご実家の土地建物以外に特に預金等がない場合には、なんとかして相続税を工面する必要も生じますので、それならいっそ売ってしまおうと考える相続人がいるのもまた自然かと思われます。

どうしても相続人間の話し合いで合意できない場合は、裁判所で調停を試み、調停も不調で終わった場合は遺産分割審判をすることになります。

 

まとめ

 

以上の相続の流れを、ご遺族である相続人の方と、弁護士との役割分担の形でまとめると以下のようになります。

 

 
ご遺族 弁護士
※ できるだけ早くに弁護士に相談しましょう
1 被相続人が亡くなったら、弁護士にその旨を連絡し、遺言を探す。見つけたら弁護士へ。
2 遺言探しの一部を代行(公正証書遺言の探索)
3 相続人の調査
4 相続放棄するか否か決める。
5 他の相続人にも相続放棄の有無を確認し、相続人の確定
6 相続人のうち未成年者等がいないか確認し、遺産分割の当事者の確定
7 被相続人の預金、株式、借金等の洗い出し。相続財産が存在する可能性がある口座等について弁護士に伝える。
8 遺族からの情報をもとに、金融機関や信用情報機関等に相続財産の存否について照会する。
9 相続財産の評価について相続人間で話し合う。
10 相続財産の評価について相続人間で折り合えなかった場合は裁判所に鑑定を依頼
11 自分も含めた相続人に特別受益や寄与分がないか弁護士と検討する。 11 相続人に特別受益や寄与分がないか依頼者と検討する。
12 遺産分割方法について相続人間で話し合う。だめなら調停へ。 12 遺産分割方法について、依頼者に代わって協議する又は依頼者にアドバイスを行う。
13 遺産分割方法について相続人間で折り合えなかった場合は裁判所で審判を行う。

 

いかがだったでしょうか。

上記の手続を全て自分で行うのは大変ですし、途中でミスをしてやり直しになってしまったり、もらえるはずだった遺産をもらいそこねたりしてしまう可能性がありますが、弁護士に相談すれば大部分を弁護士に任せることができます。

弊所では「家族関係を大切にする相続」をモットーに、できるだけ相続人全員が納得できる相続となるよう配慮・工夫しております。
プロとして主張すべきところは主張し、争うべきところは争いますが、無用の禍根を残す必要はありません。

法律相談のみのご来所も歓迎しておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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