皆様こんにちは。弁護士の岩本です。
「●●署は今日、親書開封罪の疑いでA容疑者を逮捕しました。なおAさんは取り調べに対して黙秘している模様です」
…皆様もテレビ報道などでこのようなことを聞いたことがあると思います。
(テレビ等では「容疑者」といいますが、法律上は逮捕勾留中の場合「被疑者」と呼びます。これは視聴者が「被疑者」と「被害者」を聞き間違えないようにするためと聞いたことがあります。)
そこで、今回は逮捕された後の手続きの流れを簡単に説明し、勾留中の生活などについて書こうと思います。
逮捕されると被疑者は警察署に連行され取り調べを受けることになります。法律上警察官は48時間以内に被疑者を検察官に送致しなければならないので、かなり慌ただしい場合が多いです。
警察官から被疑者の送致を受けた検察官は、送致された被疑者に対し所定の手続きをし、24時間以内に釈放するか勾留請求するかの判断をします。
釈放とは拘束を解かれるということです。
一方、勾留請求とは検察官から裁判官に対して「被疑者を勾留してください」と求めるもので、検察官の勾留請求を受けた裁判官はこれを認めるべきか判断します。
「勾留」とは、被疑者の身体を拘束することです。わかりやすく言うと、「警察署に居ろ」ということです。
裁判官は、①被疑者に定まった住居がないとき②罪証隠滅の恐れがあるとき③逃亡する疑いがあるとき、という三つのいずれかに該当し、裁判官が勾留の必要性があると判断すれば勾留決定を出すことができます。
勾留決定がなされた場合、被疑者は勾留請求がされた日から起算して原則10日間勾留されることになります(延長が最大で10日間できる)。
さて、ここまでが簡単な逮捕勾留中の流れになります。
次に、逮捕勾留中の被疑者の生活について説明します。
勾留中の被疑者は、警察官や検察官からの取り調べを受けます。事件によっては連日の取り調べという事件もありますが、必ずしも毎日取り調べがあるものでもありません。そのような日は暇な場合が多いため本の差し入れを要望されることがよくあります。また、留置に居る人は、とにかく新聞を隅々まで読んでいることが多いです。私自身、被疑者に時事問題の話題を振られよくわからなかったことから、これでは弁護士としてもダメだなと思い朝刊の契約をした経緯があります。
また、被疑者にとってとても大切なのは弁護人との接見です。接見では、事実関係の聞き取りや取り調べに対するアドバイスをしたり、今後の見通しを踏まえたアドバイスをします。また、場合によっては被害者の方への賠償についての話し合いなどもします。弁護人との接見は24時間いつでも時間制限なしにすることができるので、夜遅くまで接見することも珍しくありません。私自身は、接見中は事件に関連する話以外にもその人自身の話を聞いたり、私自身の話も結構するほうだと思います。
原則として被疑者の家族友人も接見をすることは可能です(一般面会と呼ぶことが多いです)。家族との面会では家族が反省を促したり、被疑者の精神的な面を支えたりすることが多いと思います。しかし、一般面会は留置担当者の立ち合いや時間制限があります。また、接見禁止という処分がされた場合には弁護人以外とは面会できないので、このような面会は制限されます。
留置施設では、毎日食事が提供されますがお菓子やコーヒーなどといったものは提供されません。しかし、現金を所持している場合であれば、週に一度程度ですがお菓子やコーヒーを買うこともできます。警察署によってどのようなものが買えるかは区々で、甘いパンやスナック菓子、ジュースなどが買えることもあります。私自身、弁護人として選任された事件で、関東のある警察署で「そんなものが用意されているの!?」とびっくりしたことがあります。
一昔前までは、タバコも吸えましたが現在はおそらく全国的に吸えなくなっていると思われます。
接見室の様子はテレビドラマなどでよく出てきますが、実際の接見室も同じ感じです。私もテレビドラマなどを見ながらよくできてるなぁと感心します。(逆に裁判の様子などは「!?」ということもありますが。)
刑事事件に関しては多くの方は関係ないと思われますが、事件に巻き込まれたり、残念ながら冤罪の誤認逮捕ということも可能性もゼロではありません。
誤認逮捕も含めてないのが一番ですが、日本の刑事司法のルールの一つとして最低限の知識として知っていただければ幸いです。
また、刑事事件は初動が非常に大切です。万が一、ご家族などが刑事事件の当事者になってしまった場合には、弁護士に相談することをお勧めいたします。
弊所でも、刑事事件に関連する相談は受け付けております。
今回はとても簡単にではありますが、逮捕勾留の手続きの流れと留置施設の中の生活の一部を紹介させていただきました。
次回は、勾留後の流れについて解説しようと思います。