弁護士が勧める弁護士の選び方

こんにちは。弁護士の五十嵐です。

最近、法律相談の技法について勉強していたところ、その分野の研究者である先生が大変興味深いことをおっしゃっていました。

そもそも、Aという弁護士とBという弁護士がいたときに、どちらの方が法的知識や能力に優れた弁護士かということは、法律の素人である相談者からはわからない。
その判断ができるのであれば、それはもう法律の素人ではない。
まさにそのようなところがわからないからこそ、弁護士のところに相談に来るのです。

だから、相談者が弁護士を選ぶとき、法的知識や能力というのはさほど問題とならない。

私はこちらの先生に大学院でもお世話になったのですが、こちらの先生の、長年の研究結果に裏付けられた鋭いご指摘には感銘を受けることが多いです。
上で述べられているのも当たり前のことではあるのですが、いざはっきりと言われると、飲み込むのにやや抵抗がある自分に気が付きます。

というのも、我々弁護士は法的にものを考える訓練を受けていますので、法的知識や能力に優れた弁護士であることが良い弁護士であると考えがちです。
そのため、難解な法的構成や訴訟上の手続、特殊な業法や規制法などについて勉強を続けます。少なくとも弊所の弁護士はしています。

しかし、相談者の方からすれば、弁護士の法的知識や能力についてはわからない以上、この点についての重要度はそれほど高くないとのことです。
むしろ、弁護士を評価する上では弁護士の人柄や態度、人の話を聞く姿勢といったものに対する配点が高いとのことでした。

どうすれば良い弁護士を選べるか

 

上記のご指摘から我々弁護士が学び取るべき教訓は多々ありますが、それと同時に相談者の方が良い弁護士を自ら選ぶことの難しさもまたやはり問題であると感じるところです。

そこで、今回は私なりに考えた、良い弁護士の選び方をご説明したいと思います。

1 専門分野にだけ注目するのは良くない

 

弁護士への相談を考えていらっしゃる方が特に気にされる点として、弁護士の専門分野が何なのかという点があります。

確かに、この点は法律に詳しくない方からしても弁護士の実力を推察しやすい要素です。

しかし、専門分野が何であるかという点だけに注目して弁護士を選ぶことは危険であると私は考えます。

正しい分野を選択できるか

 

どのような分野を専門としている弁護士に頼むべきなのかがはっきりしているケースの場合には、専門分野は良い判断材料になります。
離婚、債務整理、相続などは分野としてわかりやすいでしょう。

他方で通常は、事件の肝となる部分がどのような法律で、どのような専門知識が必要なのかという点については判断が難しいように思います。
胸が痛いから心臓外科に行く、とはならないのと同じです。

また、シンプルな離婚の事件に見えても、実は税法が大いに関係しているというように、見かけ上の分野と実体的分野とが異なる事案もあるでしょう。
そのようなとき、離婚しか取り扱いのない弁護士では、そもそも税法上の問題が隠れていることにすら気が付けない可能性があります。

専門分野は参考程度に

 

したがいまして、
① 専門性が極めて高い事件、
② 専門分野が明らかな事件、
③ 特殊事情がなく、類型性が高い分野の典型的な事件(よくある離婚、よくある交通事故、よくある債務整理など。)
といった場合には、専門分野は大いに参考になると思います。

他方で、それ以外の場合には弁護士の専門分野の重要性は下がり、せいぜい3番目か4番目ぐらいの考慮要素にとどめておいた方が良いと思います。

やもすれば、「〇〇専門」をうたいつつも、他の分野を勉強したくないだけの弁護士に当たってしまうかもしれません。

2 話を聴いてくれることが大事

 

では弁護士を選ぶ上で重要な考慮要素はなんなのかといえば、私は相談者の話をよく聴いてくれる弁護士を選ぶことだと思います。

白は黒にならないし、黒は白にならない

 

というのも、どんなにいい弁護士であっても、白を黒にすることはできず、また黒を白にすることはできません。

紛争を法律上解決する場合、最終的には裁判で決着をつけますので、弁護士の仕事は常に裁判を念頭に置く必要があります。

そして裁判は①事実と②証拠によって主張を組み立てますので、これらがないのであれば勝てません。

料理に例えるとわかりやすいと思います。
弁護士は料理人であり、事実と証拠を材料に、主張という料理を作ります。
あらゆるレシピを覚えており優れた技術を持つ三つ星レストランのシェフを雇ったとしても、パスタがなければカルボナーラすら作れないのです。

話を聴いて証拠を集める

 

そのため、争いになる前には証拠をとっておく仕組みづくりが、争いになった後は証拠収集がとても大事になってくるわけですが、弁護士は相談者や事件のことについては全く知らない状態で受任します。

そのため、良い証拠集めのためには、相談者から事件について丁寧に聴き取ることが重要です。

したがいまして、良い弁護士の第一条件は、

相談者の話をよく聴いてくれること

であると考えます。

他方で、相談者の方の話が裁判に関係のないところに逸れていくことというのはとてもよくあります。
そのため、聴きっぱなしというのも良くなく、時折、軌道修正のために弁護士も話をすることになります。
また、聴き取った内容をもとに法的な見解を述べるべきであることも当然です。

相談者の話をただ黙って聞き、むやみに肯定するような弁護士も、かえって問題であるように思います。

3 見積もりの説明が丁寧

 

次に重視すべきなのは、受任内容と報酬・費用についての説明が丁寧でわかりやすいことです。

いいかえれば、

どこからどこまでを、いくらでやるのか、

ということについて、きちんと説明してくれることです。

というのも、弁護士費用は一般に高額です。
そうであるにもかかわらず、業務は広範に渡りますので、きっちりと引き受ける業務の範囲を定めて、お見積もりを出すことというのは弁護士にとってなかなか大変な作業になります。
事件の処理手順と見通しがきちんと判断できないと、適切なお見積もりを出すことは難しいのです。

他方で、通常は弁護士を雇うことには不慣れな方が多いので、お見積もりの金額だけでは、「自分が一体何にお金を払ったのか」は相談者にとってもわかりづらいと思います。

したがいまして、受任内容と報酬・費用についての説明を丁寧にしてくれる弁護士は、相談者のことを考えてくれている弁護士であることや、事件の処理手順や見通しをきちんと判断できる弁護士であることの推定が働くものと考えます。

反対に、見積もりの理由について特に説明しないような弁護士は信頼に足らないでしょう。

4 気が合うか

 

最後にこれかと思われるかもしれませんが、なんだかんだで最終的にはこの点に尽きると思います。

なぜならば、弁護士と依頼人とは、きちんとコミュニケーションをとれる必要があるからです。

弁護士は、ただ依頼人の注文通りに動くような業務遂行はしません。
それでは弁護士の名義をただ貸しているだけになってしまうからです。
弁護士は依頼人の代理人として、そして法律の専門家として、自ら判断し、行動します。
だからこそ、弁護士が弁護士名義で出す書面や意見には、社会的に特別な価値が認められているのです。

もっとも、弁護士は依頼人にすべて一任されたとしても、節々で必ず依頼人の意思を確認します。
何を優先するか、どのような解決を望むかは人によってまちまちだからです。
依頼人の意思を無視した行動は絶対にしません。

このように、弁護士と依頼人というのは単なる請負人と注文者、店と客とという関係ではなく、ある種のパートナー関係に立ちます。
そのため、互いにコミュニケーションをきちんととる必要があるのです。

そうしますと、いざというときに弁護士に気兼ねして自分の意見が言えないようでは困りますので、意見を伝えやすい気の合う弁護士を選ぶのは重要です。

さらに、弁護士によってもどこに重きを置いて仕事をするかという点についてはかなり個人差があります。
仕事ぶりが緻密か、大胆か。
精度重視か、スピード重視か。
交渉重視か、訴訟重視か。
こういったところが自分の好みと食い違うと、弁護士の仕事に不満がたまりやすくなると思います。

まとめ

 

以上をまとめますと、私の考える弁護士の選び方のポイントは以下の4つになります。

① 専門分野は参考程度に。典型的な事件であればいいが、複雑な事件の場合は△。

② 話をきちんと聞いてくれる弁護士であることが最重要。実際に相談に行ってみて確かめるのがベスト。

③ 費用について丁寧に説明し、見積もりをちゃんと出してくれる弁護士は、事件の見通しが立っている可能性が高い。

④ 気が合いそう、腹を割って話し合いができそうな弁護士だと、委任してからもストレスが少ない。

 

ご参考になれば幸いです。

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