弁護士の五十嵐です。
弁護士を依頼する経験というのは滅多にするものではありません。
そのため、多くの方が弁護士を雇うことに不慣れで、費用感についてもイメージしづらいと思われていることが多いようです。
たいていの方は「弁護士費用は高い」というイメージをお持ちなのではないでしょうか。
そこで、今回は弁護士費用の相場についてご説明したいと思います。
弁護士費用はどのように決まるのか
統一された基準はない
大前提として、現在、弁護士費用についての統一された基準は存在していません。
かつては、日弁連が報酬基準を一律で定めていました。
しかし、それではサービスについての創意工夫や競争が生まれないとの理由からこの報酬基準は廃止されました。
そのため、現在では各弁護士が自由に値段を付けられるようになっています。
とはいえ、旧報酬基準はある程度の目安になっている
とはいえ、弁護士の業務は値段が付けにくいものでもあるため、かつての統一基準である日弁連の報酬基準は、今でも「旧報酬基準」と呼ばれ、弁護士が自分たちの仕事に値段を付ける際の重要な目安となっています。
そのため、未だ多くの弁護士がこの旧報酬基準を用いて弁護士費用を算定しています。
旧報酬基準の考え方
旧報酬基準は基本的に弁護士への報酬として①着手金と②成功報酬金を想定しています。
そして、
- 訴額 × ◯% = 着手金
- 得られた利益 × ◯% = 成功報酬金
として算出するのが基本です。
旧報酬基準の例
例えば、200万円の損害賠償請求をして、100万円の請求を認める判決を勝ち取れたとします。
その場合、まず着手金は訴額の200万円を基準に、以下のように算出されます。
200万円 × 8% = 16万円
次に、成功報酬は認容額の100万円を基準に、以下のように算出されます。
100万円 × 16% = 16万円
このとき用いられるパーセンテージは、訴訟の種類や訴額によって異なりますが、
- 着手金は訴額の8%
- 成功報酬金は利益の16%
というのが一番基本的なパーセンテージとなっており、ここから上下させて調整することとなっています。
最終的には各弁護士に委ねられている
もっとも、旧報酬基準を使うも使わないも各弁護士の自由です。
上記の考え方はあくまでもなんとなくの相場感を捉える目安ぐらいの意味合いしかないでしょう。
弁護士業務はオーダーメード
弁護士間で相見積もりを取るのは、参考程度にしかならない
そうなってくると今度は当然、複数の弁護士間で相見積もりをとって比較したくなるところですが、私はこの相見積もりを取る際には少し注意が必要であると思っています。
というのも、以下の点をしっかりと意識ができていないと、相見積もりを取ること自体にほとんど意味がなくなってしまうからです。
弁護士は決まった形のあるものを売っているわけではない
弁護士が売っている「弁護士業務」というサービスは、「フルオーダーメード」のサービスです。
そのため、例えば離婚訴訟事件について
- A弁護士が30万円、
- B弁護士が50万円、
- C弁護士が150万円
で引き受けてくれるといったときに、迷わずA弁護士を選ぶべきであるとは言えません。
それは、A弁護士が売っているものと、C弁護士が売っているものが同じであるとは限らないからです。
もしかしたら、A弁護士はほとんど経過報告もよこさず、必要最低限の業務しかしないからこそ、30万円で離婚訴訟事件を引き受けられるのかもしれません。
それでは、C弁護士が最もきめ細やかな最高のサービスを提供しているのかと言われればそれもわかりません。
弁護士がサービスの値段をあげる理由は様々であり、単により多く手間をかける前提であるからとは限らないからです。
「何を」「いくらで」引き受けてくれるのか、セットで考える必要がある
そのため、「いくらで」引き受けてくれるのかという点と同じぐらい、「何を」してくれるのかという点が重要になります。
値段だけ比べても意味がないのです。
もっとも、その弁護士がどの程度のクオリティの仕事をしてくれるのか、という点についてはそれこそ判断が難しい問題になります。
そこで、以下に弁護士の選び方について私が書いた記事がありますので、各弁護士のクオリティについてはこの記事を参考に判断されるのがよいかと思います。
弁護士費用が上がる要素・下がる要素
次に、同じ弁護士が同じ種類の事件に関して見積もりを出す場合、その金額の多寡をどのように決めているのかをご説明します。
基本的には、ベースとなる「普通の事件」を想定した「普通の値段」があります。
そこから、報酬金額を上げる要素があれば上げ、下げる要素があれば下げる、という発想です。
上がる要素
訴額が大きい
訴額が大きいと、これに比例して弁護士費用は増加します。
ただし、訴額に比して割安になります。
事案が複雑
事案が複雑である場合、事案を整理したり、証拠を収集したり、書面を起案する上で多くの稼働が必要となるため、弁護士費用は増加します。
煩雑な手続が必要
煩雑な手続が必要である場合、手続を履践する上で多くの稼働が必要となるため、弁護士費用が増加します。
下がる要素
訴額が小さい
訴額が小さいと、比例して弁護士費用も下がります。
ただし、訴額に比して割高となります。
事案がシンプル
事案がシンプルである場合には、稼働が減るため弁護士費用が下がります。
手続の類型性が高い
典型的な類型性の高い手続で済む場合、稼働が減るため弁護士費用が下がります。
適切に見積もりを出すのは難しい
以上が、弁護士が報酬額を決定するときの基本的な考え方です。
しかし、実際には適切な見積もりを出すことはなかなか難しいのが現実です。
私の場合、高くしすぎてしまうようなことはほとんどなく、安く設定しすぎてしまったなと思うことが多いです。
参考までに…弊所の料金体系
ちなみに、弊所の一般民事の料金体系は概ね以下の通りです。
交通事故:着手金は0円~、報酬金は経済的利益の20%程度
離婚・相続事件:着手金は200,000円~、報酬金は経済的利益の8%程度~
刑事事件:着手金は200,000円~、報酬金は200,000円~
迷ったら見積もりのご相談を
以上、弁護士費用の相場についてご説明いたしました。
弁護士費用を恐れるあまりご相談が遅くなってしまうと、解決が難しくなってしまう場合があります。
※早めの相談が望ましいことについては以下の記事をご参照ください。
⇨初めての法律相談:4つのコツ
費用感が気になる場合は、まずは見積もりだけでもご相談にいらしてください。
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