ベンチャーキャピタルファンドとは?〜①基本編〜

弁護士の五十嵐です。

スタートアップと切っても切れないのがベンチャーキャピタルファンド(VCファンド)。

スタートアップに投資してくれるメインプレーヤーの投資家です。

しかし、実際にはVCファンドが一体どんなものなのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回はVCファンドを新しく作りたい方、VCファンドについてもっと知りたいという起業家の方、その他スタートアップに興味がある皆様に向けて、VCファンドとは何かという点について、詳しく、そしてなるべくわかりやすく解説しようと思います。

第1回は基本編です。

 

 

ベンチャーキャピタルファンド(VCファンド)とは?

ファンドとは?

 

そもそもファンド(fund)とは、

「基金」、すなわち特定の目的を実行するための元手となるお金

のことです。

投資の世界では、より多くのお金を効果的に投資に回すため、①投資家からお金を集め、②集めたお金を投資に回して利益を出し、③その利益を分配するというスキームが多用されます。

投資の世界でいう「ファンド」とは、

  1. このようなスキームのために集まったお金そのものや
  2. そのお金のビークル(=乗り物のこと。後述します。)

のことを指します。

「ファンドを組成した。」

というときには、お金を集めてそのお金のためのビークルを作った、という意味になります。

 

ビークルとは?

 

ビークル(vehicle)とは、そもそもは車やバイクなどの「乗り物」を指す言葉です。

例えば、自動車のハイブリッド車のことをHV、電気自動車のことをEVと呼びますよね。

これらは Hybrid Vehicle や Electric Vehicle の略であり、 ビークル(vehicle)はこれらの “V” に当たる部分です。

 

さて、投資の世界でビークルというと、お金を集めて投資して、利益を分配するための「器」のことを指します。

つまりはお金の「乗り物」となる法的枠組みのことです。

 

お金の乗り物候補としては、種々ある組合や法人の制度が考えられます。

 

それではVCファンドとは?

 

VCファンドとは、

ベンチャー企業に対する投資を目的とする投資ファンド

を言います。

つまり、投資ファンドの一種です。

法律上の概念ではなく、明確な定義があるわけではありません。

※たまに「VCかファンドか」といった二項対立で論じる解説を見かけますが、誤解を招く表現であるように思います。VCといったときにはジャフコのような法人かもしれませんし、VCもファンドを立てます。VCは投資家の分類であり、ファンドは投資スキームのことですので、両者は比較対象にならないものと思われます。おそらく趣旨としては、「VCファンドか、それ以外の投資ファンドか」が正確なのではないでしょうか。

 

他の投資ファンドとの違い

 

VCファンドは投資ファンドの一種ですが、他の投資ファンドとの違いは

ベンチャー企業に対する投資を目的としている点、

すなわち投資対象にあります。

 

VCファンドのビークル

代表的なビークル

 

VCファンドの代表的なビークルとしては、

  1. 民法上の組合(民法667)
  2. 匿名組合(商法535)
  3. 投資事業有限責任組合(LPS法)
  4. その他海外ファンド等

が挙げられます。

ほとんどが組合じゃないか、と思われたかもしれません。

しかし、「組合」といってもさまざまな種類があるのです。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

1 民法上の組合

 

概要

民法上の組合とは、民法667条に基づく組合をいい、

「各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる」

ものになります。

組合の原則形態といったイメージですね。

原則として各組合員全員が業務執行権を有します。

もっとも、実務上は組合員中の1人又は数人に業務執行を委任し、業務執行組合員になってもらうことが多いです。

メリット

  • 投資対象について法律上の制限がない。
  • 法人課税がなく、組合員の段階で課税されるパススルー課税である。

 

デメリット

  • 組合員全員が無限責任を負う。
  • 情報開示について何ら法定されていない。

 

上記のようなデメリットから、VCファンドのビークルとしては、もはやあまり使われていないようです。

 

2 匿名組合

 

概要

匿名組合とは、商法535条に基づく契約関係であり、

「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる」

ものになります。

 

民法上の組合や投資事業有限責任組合は多数当事者間での契約ですが、

匿名組合は①匿名組合員と②営業者との間の1対1の契約です。

 

営業については営業者が行います。

匿名組合員は営業を行いません。

 

また、営業者は自己の名で営業を行いますので、営業者がした行為の効果は全て営業者に帰属します。

営業者がした行為の効果は匿名組合員には帰属しません。

 

つまり、自己の名で法律行為の矢面に立っているのは営業者のみです。

匿名組合員は営業者の名の後ろに隠れ、自己の名では法律行為を行わない(=匿名)のです。

黒幕といったイメージですね。

 

メリット

  • 匿名組合員は営業に関して第三者と法律関係に立たないため、事実上の有限責任である。
  • 実質パススルー課税である。

 

デメリット

  • 1対1の契約なので、投資家が複数いる場合には、営業者をハブにして各投資家と個別の契約が必要となる。
  • 海外の投資家には馴染みが薄い。

 

3 投資事業有限責任組合(LPS)

 

概要

投資事業有限責任組合(LPS)は、投資事業有限責任組合法(LPS法)に基づく組合をいい、

「投資事業有限責任組合契約によって成立する無限責任組合員及び有限責任組合員からなる組合をいう」(法2条2項)

とされています。

 

無限責任組合員は業務を執行し、無限責任を負います。

有限責任組合員は業務を執行せず、有限責任しか負いません。

 

投資事業有限責任組合は事業目的に制限がある他、登記が必要であったり、投資事業有限責任組合契約に定めなければならない事項が法定されていたりするなど、他の組合と比べると制度が難解かつ複雑です。

しかし、出資者を有限責任組合員にできることからお金を集めやすく、とてもよく使われるビークルです。

メリット

  • 有限責任組合員は出資額を限度とする有限責任しか負わない。
  • 組合員の段階で課税されるパススルー課税である。

 

デメリット

  • 無限責任組合員は組合の債務について無限責任を負う。
  • 要件が細かく法定されており、特別の規制もあるなど、手続・制度が複雑である。

 

4 その他海外ファンド等

 

その他、ケイマン諸島法やデラウェア州法等、海外法に基づいて組成されるファンドもあります。

海外投資家を呼び込もうと思った場合、海外投資家に馴染みがある海外ファンドを組成することも考えられます。

日本の投資事業有限責任組合と平行して組成することもあります。

 

まとめ

 

以上をまとめると、以下の通りとなります。

 

我が国で最も多く用いられるビークルは「3 投資事業有限責任組合(LPS)」であるものと思われます。

そこで、第2回ではこの投資事業有限責任組合について解説しようと思います。

ここまでお疲れさまでした。

第2回の記事へ⇨ベンチャーキャピタルファンドとは?〜②法律編-1(LPSの基礎)〜

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