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【連載③】離婚と財産分与について【離婚問題】

皆さんこんにちは。弁護士の岩本です。

離婚という言葉を聞いたとき、皆さんはどういったことを思い浮かべますか?

「慰謝料」や「親権」は争いになりニュースなどでも度々話題になることから、比較的すぐに思い浮かべられるのではないでしょうか。

では「財産分与」については、いかがでしょうか?

慰謝料や親権に比べるとなじみのない言葉かもしれませんが、財産分与も離婚の際の大きな問題となります。

本日は離婚における財産分与についてお話します。

1.財産分与とは?

 

財産分与とは、婚姻生活に築いた夫婦の財産を、離婚の際に分け合う作業のことで、離婚の際、相手方に請求できる権利として民法に定められています(民法768条1項)。

民法768条1項(財産分与)

協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

 

財産分与の請求権は民法768条によって保障されている権利ではありますが、財産分与の具体的な内容については当事者の協議によって初めて定められます。

ですが、実務上は、当事者の話し合いによって解決できないことも多く、協議がまとまらない場合や協議をすることができない場合は、家庭裁判所へ審判の申立をすることができます(民法768条2項、家事事件手続法39条、別表第二の4)。

また、財産分与は家事手続法別表第二の家事審判事項であることから、調停の申立てをすることもできますが(家事手続法244条)、調停が不調に終わった場合は審判に移行します。

さらに、財産分与は、離婚に付随する事項であるため、離婚訴訟における附帯処分として申し立てることもできます(人事訴訟法32条1項)。

 

2.財産分与の種類

 

財産分与の性質は大きく分けて3つあります。

それぞれの特徴については以下の通りです。

 

①清算的財産分与

 

婚姻中に築いた夫婦の共同財産を、それぞれの寄与度に応じて分け合うことを清算的財産分与といい、財産分与の中核になるものです。

もう少し平易な言葉でいうと、

「結婚している間に、夫婦間で協力して形成・維持してきた財産については、その名義のいかんにかかわらず夫婦の共有財産と考え、離婚の際には、夫々の貢献度に応じて公平に分配る」

というものになります。

清算的財産分与は、離婚原因があるか否かによっては左右されず、あくまで2人の財産を2人で分けましょうという考え方に基づくものです。

そのため、清算的財産分与は、離婚原因を作ってしまった側である有責配偶者からの請求でも認められることになります。

 

②扶養的財産分与

 

共有財産を公平に分配しても、離婚後、一方が生活に困窮してしまう場合、金銭を補充して一方の離婚後の生活維持を図ることを扶養的財産分与といいます。

夫から妻に支払われるケースが多くを占めますが、この扶養的財産分与を行うことは実のところ義務ではありません

そのため、「離婚後も働けない理由がある」などのとき、双方が話し合って決めていくことになります。

争いになった場合、実際にどの程度、生活が困難に陥るのかが考慮されることになります。

 

③慰謝料的財産分与

 

夫婦の一方が相手方に慰謝料を支払う義務を負う場合、それを加味した財産分与を行うことを慰謝料的財産分与といいます。

離婚の際の慰謝料は、財産分与とは性質が異なるものですから、両者は本来別々に算定して請求するのが原則です。

しかし、「慰謝料」と「財産分与」は、両方とも金銭が主な問題となるため、慰謝料と財産分与を明確に区別せずにまとめて「財産分与」として請求をしたり、支払をすることがあります。

上記のような背景から、この場合の財産分与は「慰謝料も含む」という意図があるので、慰謝料的財産分与と呼ばれています。

 

3.財産分与の対象となる財産

 

財産分与の対象となる財産は、婚姻生活中に、夫婦が共同で築いた財産のみです。

「離婚の際に手元にある財産すべて」ではありません。そのため、夫婦のそれぞれが保有するとみなされる個人的な財産は含まれません。

財産分与の対象となる、夫婦が婚姻中に共同で築いた財産を「共有財産」といいます。

財産分与の対象とならない、夫婦のそれぞれが保有する財産を「特有財産」といいます。

共有財産と特有財産にはどういったものが含まれるのか、それぞれの例は以下の通りです。

共有財産 特有財産

・不動産

・保険の解約返戻金

・退職金

・現金や預貯金

・婚姻以前から保有する財産

・親族から相続した財産

・特有財産で購入した、もしくは贈与されたバッグや貴金属等

 

借金があった場合

 

婚姻生活中につくった借金などの負の財産も、財産分与の際に考慮されます。

しかし、家を購入するための住宅ローンなど夫婦の生活のためにした借金のみが対象で、一方が過度の遊興や浪費、ギャンブルなどのために作った借金は、財産分与において考慮されません。

生活費等のための借金は、プラスの財産から差し引く形で財産分与を行います。

プラスの共有財産が5000万円、借金が1000万円という場合は、差し引いた4000万円を財産分与します。

 

4.財産分与の割合

 

財産分与の対象となる財産が確定されたら、どのような割合で財産を分与するのかが問題となります。

財産分与の割合は、財産の形成や維持に夫婦がどの程度貢献したのかという点に着目して決めていくことになりますが、分与の割合はそれぞれ1:1が原則です。

夫だけに収入がある場合であっても、婚姻中の、共有財産の財産分与の割合は、1:1が原則と考えられているのです。

財産分与の割合は具体的な事案ごとに異なるため、例外的に個別具体的な事情によって割合が修正されることもあります。

たとえば、一方の特殊な努力や能力によって高額な資産形成がなされたような場合、その特殊な努力等を考慮すべきということで、分与の割合が修正されることもあります。

 

5.財産分与の方法

 

財産分与の対象財産と分与の割合が確定したら、次は分与の方法が問題となります。

方法には様々なものがありますが、実務においては次の3つが主な方法になることが多いです。

1 一方が不動産や自動車等の財産を保持し、他方へ金銭の支払

2 対象財産を売却して利益を分割

3 現物による分与

取り決めをした場合には、その内容を記載した文書を作成することが一般的です。

しかし、数年にわたって分割で支払うような場合には、支払が滞る危険性もありますので、あらゆることを想定して、公正証書を作成しておくことが望ましいでしょう。

当事者の話し合いでまとまらない場合には、離婚調停、離婚審判、離婚訴訟といった裁判所の手続を通して決めていくことになります。

 

6.財産分与の請求時期

 

財産分与を行う時期についてですが、財産分与は離婚と同時に決められることが一般的です。

離婚の際に財産分与の取り決めをしなかった場合であっても、離婚後2年以内であれば、家庭裁判所に調停や審判の申立をして、財産分与を請求することができます。

 

民法768条2項

2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。

 

2年という期間は長いように思えるかもしれませんが、バタバタしている間に意外にあっという間に過ぎてしまいます。

また、離婚をしてしまうとお互いに連絡も取りづらくなる、財産の把握が困難となる、財産が散逸してしまう等の事情があります。

そのため、できるだけ離婚時にきちんとした財産分与を行っておくことが望ましいでしょう。

 

7.まとめ

 

現金の場合には、分け方は簡単ですが、財産に家、自動車、家財道具、いろいろなものが含まれると、複雑になってきます。

こういった複雑な財産分与こそ、相手とのやりとりを有利に進める交渉力と法律知識が必要になります。

財産分与の際に生じうる負担を可能な限り小さくし、次の人生の”良いスタート”を切られるよう、法律と交渉のプロである弁護士を利用されることをお勧めいたします。

 

前回までの連載の記事についてはこちらをご覧ください。

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